名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

カテゴリ:日記 > 和歌・短歌・俳句


吹き飛ばす石は浅間の野分かな
                    芭蕉

(ふきとばす いしはあさまの のわきかな)

意味・・浅間のふもとを行くと、折から激しい野分の
    ために、浅間山の小石までが吹き飛ばされて
    いる。さすがに浅間山の野分はすさまじいこ
    とだ。

    強風で砂や小石が吹き飛ばされ、眼も開けら
    れない状況です。
    
 注・・野分=秋から冬にかけて吹く強い風。台風や
     暴風など。

作者・・芭蕉=ばしょう。1644~1675。

出典・・更科紀行。 


 さりともと 思ふ心も 虫の音も よわりはてぬる
秋の暮れかな

                藤原俊成

(さりともと おもうこころも むしのねも よわり
 はてぬる あきのくれかな)

意味・・今まではそうであっても、これからは何とか
    なるだろうと思う心も、そして虫の音も、す
    っかり弱々しくなってしまった秋の暮れです。

    出世が遅れている不遇感の中から、今までは
    不運でもこれからは良い事もあろうと期待す
    る気持ちも、晩秋の虫の音も、衰えてしまっ
    たと、重ね合わせて歎いています。

作者・・藤原俊成=ふじわらのとしなり。1114~12
    04。正三位・皇太后宮大夫。「千載和歌集」
    の撰者。

出典・・千載和歌集・333。


 春は萌え 夏は緑に 紅の まだらに見ゆる
秋の山かも
             詠み人しらず 

(はるはもえ なつはみどりに くれないの まだらに
 みゆる あきのやまかも)

意味・・春は木々がいっせいに芽吹き、夏は一面の新緑
    だったが、今は紅が濃淡さまざまな模様を描き
    だしている。素晴らしい秋の山だ。

    季節による山の色を述べて、秋の山を賞賛して
    います。

 注・・かも=詠嘆を表す。・・だなあ。

出典・・万葉集・2177。


秋風や藪も畠も不破の関
                  芭蕉 

(あきかぜや やぶもはたけも ふわのせき)

意味・・来て見れば不破の里には寂しく秋風が吹き
    わたっている。往時を偲んで関跡に立てば、
    眼前の藪や畠に秋風が吹きさわぐばかり。
    伝え聞く不破の関屋はただ風の中に幻を残
    すのみであった。

    関跡の現況を「藪も畠も」と描きだして、
    黍離麦秀(しょりばくしゅう)(亡国の遺跡
    に黍(きび)や麦などの生い茂っているさま)
    の懐古の思いを詠んでいます。

    次の歌を踏まえた句です。
    「人住まぬ不破の関屋の板びさし荒れにし
    のちはただ秋の風」  (意味は下記参照)

 注・・秋風・・ここでは暮秋の秋風。草木を枯ら
     し、万物を凋落させる風を意味し、もの
     侘びしい秋風である。
    不破の関=岐阜県不破郡関が原にあった関。
     逢坂の関が設置されて廃止になり、その
     荒廃の哀歓を詠ずる歌枕となった。

作者・・芭蕉=ばしょう。1644~1694。「野ざらし
     紀行」。

出典・・野ざらし紀行。
 
参考歌です。

人住まぬ 不破の関屋の 板廂 荒れにし後は
ただ秋の風
               藤原良経
           
(ひとすまぬ ふわのせきやの いたびさし あれにし
 のちは ただあきのかぜ)

意味・・もう関守が住まなくなった不破の関の番小屋の
    板廂。荒れ果ててしまったあとは秋風が吹き抜
    けるばかりだ。

    かっては威勢がよかったが、荒廃してしまった
    不破の関のありさまに、人の世の無常と歴史の
    変転をみつめている。
    
 注・・不破の関屋=岐阜県関ヶ原にあった。675年
     に開設、789年に廃止された。「関屋」は
     関の番小屋。

作者・・藤原良経=ふじわらのよしつね。1206年没、
    38歳。従一位摂政太政大臣。「新古今集仮名序」
    を執筆。

出典・・新古今和歌集・1601。
 


 ぬき足に虫の音わけてきく野かな
                    池西言水

(ぬきあしに むしのねわけて きくのかな)

意味・・野原一面に虫の音が聞こえる。せっかく鳴いて
    いる虫を、驚かせてしまってはいけないので、
    抜き足さし足で、そっと虫の声を分けるように
    野中に歩み入って、虫の声の中にひたるように
    聞いている。

    「虫の音わけて」というところに、虫の声に静
    かに身をひたす緊張感と満足感が表れている。

 注・・ぬき足=抜き足。足を静かに抜き出すように上
     げて歩くこと。足をそっとおろす意の差し足
     とともに、抜き足差し足という熟語として用
     いる。
    虫=秋の夜に鳴く種々の虫の総称。

作者・・池西言水=いけにしごんすい。1650~1722。

出典・・句集「夏木立」(小学館「近世俳文俳句集」)

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