名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

カテゴリ:日記 > 和歌・短歌・俳句


 人も見ぬ よしなき山の 末までに すむらん月の 
かげをこそ思へ          
                 西行

(ひともみぬ よしなきやまの すえまでに すむらん
 つきの かげをこそおもえ)

意味・・人の見ようとしない、由緒のない山の奥にまで
    照り澄んだ光を落としている月は格別に思われ
    ることだ。

    人の善し悪しの念に関係なく平等に照らす月は
    尊い、という心を詠んでいます。

 注・・よしなき山=由緒のない山。
    すむ=「澄む」と「住む」の掛詞。

作者・・西行=さいぎょう。1118~1191。俗名佐藤義
      清。下北面の武士として鳥羽院に仕える。
      1140年23歳で財力がありながら出家。出家
      後京の東山・嵯峨のあたりを転々とする。
      陸奥の旅行も行い30歳頃高野山に庵を結び
     仏者として修行する。家集「山家集」。

出典・・山家集・344。


 撫子は いづれともなく にほへども おくれて咲くは
あはれなりけり        
                  藤原忠平

(なでしこは いづれともなく におえども おくれて
 さくは あわれなりけり)

意味・・撫子はどれがどうとも優劣つけがたく美しく
    咲き映えているが、遅れて咲いた撫子は特に
    可憐に思われる。そのように子供達はだれも
    区別なく可愛いものだが、遅く生まれた子供
    というものは、とりわけ可愛いものだ。

    忠平の末の子が撫子の花を持っていたので、
    母親に花に添えて詠んで持たせたものです。
    末子は他の兄弟より年が離れていた。

 注・・にほへども=美しく色づいているが。
    あはれ=いとしい。

作者・・藤原忠平=ふじわらただひら。879~949。
    太政大臣。

出典・・後撰和歌集・203。


 草の原 涼しき風や わたるらん 夕露またぬ 
虫のこえごえ
                心敬
            
(くさのはら すずしきかぜや わたるらん ゆうづゆ
 またぬ むしのこえごえ)

意味・・草原を夕方の涼しい風が吹き渡っているから
    だろうか。夕露を待ちきれず鳴き出した虫の
    声々が聞える。
 
    夕べを待ちきれず鳴き出した虫の声に、季節
    の変化を感じています。

 夕露=はかない命を暗示。虫も短い命を力いっぱい
  鳴いていることも暗示している。

心敬=しんけい。1406~1475。権大僧都。

出典・・寛正百首(岩波書店「中世和歌集・室町篇」)


 ありしにも あらで憂き世を わたるかな 名のみ昔の
真間の継橋        
                    藤原良基
               
(ありしにも あらでうきよを わたるかな なのみ
 むかしの ままのつぎはし)

意味・・過ぎた昔と違って、今はつらい人生を渡る
    ことだ。真間の継橋のように、名だけは昔
    のままに継いでいるが。

    昔の摂政関白の良き時代を述壊した歌です。

 注・・ありし=以前の、昔の。
              名=藤原一族の一流の名声。
    真間の継橋=下総国の歌枕。「継橋」は橋
     板を継ぎ渡した橋。真間は「昔のまま」
     を掛ける。

作者・・藤原良基=ふじわらのよしもと。1320~
    1388。北朝の天皇に仕えて摂政関白を長
    期務める。北朝と南朝との戦乱の時代に生
    きる。

出典・・詠百首和歌・97(岩波書店「中世和歌集・
    室町篇」)  
  


秋の夜の あはれはたれも しる物を われのみとなく
きりぎりすかな
                  藤原兼宗
            
(あきのよの あわれはたれも しるものを われのみ
 となく きりぎりすかな)

意味・・秋の夜の哀れさは誰も知るところなのに、私だ
    けが哀れと鳴く蟋蟀(こおろぎ)よ。

 注・・あはれ=しみじみとした趣、悲しさ、寂しさ。
    われのみとなく=自分だけが哀れを知るかのよ
     うに鳴く。
    きりぎりす=現在のこおろぎ。

作者・・藤原兼宗=ふじわらのかねむね。1163~1242。
    正二位大納言。

出典・・千載和歌集・329。
 

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