名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

カテゴリ:日記 > 和歌・短歌・俳句


**************** 名歌鑑賞 ****************


夕顔の 棚つくらんと 思へども 秋まちがてぬ
我がいのちかも
                正岡子規

(ゆうがおの たなつくらんと おもえども あきまち
 がてぬ わがいのちかも)

意味・・夕顔の棚を作ろうと思うけれども、その夕顔の
    実がなる秋を待つことも難しい自分の命である。

    病状の悪化により命もいよいよ先が無いと感じ
    ている子規です。ても、生きている限りを
燃え
    尽くしています。夕顔の棚を作り、短歌を通じ
    て。

 注・・夕顔=うり科ひょうたん属。夏の夕方白い花を
     咲かす別名干瓢。
    がてぬ=出来ない。耐えられない。

作者・・正岡子規=まさおかしき。1867~1902。35才。
    東大国文科中退。結核で喀血し脊髄を侵され寝
    たきりの状態になる。

出典・・学灯社「現代短歌精講」。


**************** 名歌鑑賞 ***************


昔だに 昔と思ひし たらちねの なほ恋しきぞ
はかなかりける
                藤原俊成

(むかしだに むかしとおもいし たらちねの なお
 こいしきは はかなかりける)

意味・・昔でさえも、母と死別したのは、はるか昔の
    ことと思っていた。その母のことが年老いた
    今もやはり恋しく思うことである。

    死別した母を恋しく思う気持ちは、折にふれ
    て誰もが味わうことである。長い生涯の心の
    支えともなっていた母は年老いた今も忘れら
    れない。

    俊成は、10才の時に父に、26才の時に母に死
    別。77才の時に詠んだ歌です。

 注・・たらちね=母。
    はかなかかり=心細い、無常だ、むなしい、
     おおげさではない。

作者・・藤原俊成=ふじわらのとしなり。1114~1204。
    正三位皇太后大夫。千載和歌集を撰進。

出典・・新古今和歌集・1815。


**************** 名歌鑑賞 ****************


隅田川 堤に立ちて 船待てば 水上遠く 
鳴くほととぎす
               橘千蔭

(すみだがわ つつみにたちて ふねまてば みなかみ
 とおく なくほととぎす)

意味・・隅田川の土手に立って渡し舟の来るのを待って
    いたら、上流の遠くの方でほととぎすが鳴いて
    いる。

    舟を待つ手待ち時間に鳥の鳴き声を聞きながら
    ゆったりしている情景です。

作者・・橘千蔭=たちばなちかげ。1735~1808。江戸
      町奉行の与力。賀茂真淵に和歌を学ぶ。

出典・・家集「うけらが花」(東京堂出版「和歌鑑賞事典
    」)



***************** 名歌鑑賞 ***************


かんがえて 飲みはじめたる 一合の 二合の酒の
夏のゆふぐれ
                  若山牧水

(かんがえて のみはじめたる いちごうの にごうの
 さけの なつのゆうぐれ)

意味・・よそうか、飲もうか、そう考えながらにいつか
    取り出された徳利が一本になり二本になってゆ
    く。静かな夏の夕暮れの一時である。
    
作者・・若山牧水=わかやまぼくすい。1885~1928。
      早稲田大学卒。尾上柴舟に師事。旅と酒を愛す。

出典・・歌集「死か芸術か」。


*************** 名歌鑑賞 **************


斑鳩の 富の井の水 生かなくに 飲げてましもの
富の井の水
                聖徳太子

(いかるがの とみのいのみず いかなくに たげて
 ましもの とみのいのみず)

意味・・斑鳩の富の井の水を--どのみち命が保てなか
    ったのなら--飲ませてやれば良かった。富の
    井の水を。

    妃であった膳夫人(かしわでのおおとじ)が臨
    終に水を乞うたが、太子は病に障ることを案
    じて許さなかった。そのまま夫人は亡くなっ
    てしまった。その時の歌です。あの時、心ゆ
    くばかり飲ませてやれば良かった・・。

 注・・斑鳩=法隆寺がある一帯の地。
    生かなくに=生きていけないのに。
    飲(た)げて=食べて、飲んで。
    ましもの=もし・・だったらよかったろうに。

作者・・聖徳太子=しょうとくたいし。574~622。

出典・・上宮聖徳法王帝説(東京堂出版「和歌鑑賞事典」

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