名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

タグ:俳句


*************** 名歌鑑賞 *****************


力一ぱいに 泣く児と 啼く鶏との朝
                   荻原井泉水

(ちからいっぱいに なくこと なくとりのあさ)  

意味・・力一杯に泣く赤子の声が聞こえて来る。と同時に
    けたましい鶏の啼き声も聞こえてくる。なんと希
    望に満ち、躍動的な朝なのだろう。

    力一杯に生きるという生命感を訴えています。
    
作者・・荻原井泉水=おぎわらせいせんすい。1884~19
    76。東大文学部卒。

出典・・句集「原泉」(尾形仂著「俳句の解釈と鑑賞事典」)


****************** 名歌鑑賞 ****************


わらやふるゆきつもる
                 荻原井泉水

(藁屋 降る 雪積もる)

意味・・藁屋に降り積もる雪、無心に降る雪、やわらかく
    降る雪。
 
    かな書きの句にして、雪の柔かさを示しています。
    大正13年の作で、その1年後に、三好達治は次の
    詩を書いています。

    「雪」   三好達治

    太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
    次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。

    太郎の家にも、次郎の家にも雪が降っている。
    静かに雪が降り積もる中、スヤスヤと眠る子供の
    姿に、静けさとあどけなさが感じられる詩です。
    お母さんは安心して夜なべの針仕事をしているの
    だろうか。

    井泉水の句に安堵感が感じられます。

作者・・荻原井泉水=おぎわらせいせんすい。1884~19
           76。東大卒。機関誌「層雲」が有名。

出典・・村上譲著「仏心の俳句」。


*************** 名歌鑑賞 ***************


いねいねと 人にいはれつ 年の暮   
                    路通

(いねいねと ひとにいわれつ としのくれ)

意味・・年の暮、人に頼って生活をするような境遇の
    自分は、あちらでもこちらでも「あっちへ行
    け」と言われ、冷たくあしらわれることだ。

    漂泊の僧として乞食生活を送った路通らしい
    句です。同門のみならず芭蕉にも不評を買っ
    た身の上を「いねいね」という語で厳しく見
    つめています。

 注・・いね=去ね、行け。

作者・・路通=斎部路通(いんべろつう)。1649~173
        8。神職の家柄であったが、乞食となって漂
    の旅を続けた。芭蕉に師事。

出典・・歌集「猿蓑」。


*************** 名歌鑑賞 **************

ゆく年や膝と膝とをつき合わせ
                   夏目漱石

(ゆくとしや ひざとひざとを つきあわせ)

意味・・今年も残り少なくなった。一年を振り返ると
    私たちは、心を許し親しく接する間柄であっ
    た。今、くる年に向かって語り合っている。
    次の一年もこうありたいものだ。

    心の通い合う人間関係、いいなあ。

作者・・夏目漱石=なつめそうせき。1867~1916。
    東大英文科卒。小説家。

出典・・大高翔著「漱石さんの俳句」。


************** 名歌鑑賞 *************


目を閉じて聞き定めけり露の音
                三遊亭円朝

(めをとじて ききさだめけり つゆのおと)

意味・・目を閉じて静かにしていると、庭の草木
    が思い浮かばれてくる。その草木には露
    が宿っていることだろう。耳を澄まし、
    心を露に集中していると、草木の葉から
    露がこぼれ落ちる音が聞こえてくるよう
    だ。こういう心境になれることはいいも
    のだ。

    円朝の辞世の句です。東京の谷中にある
    墓碑には「目を閉じて」が「耳しひて」と
    改作されています。

作者・・三遊亭円朝=さんゆうていえんちょう。
     1839~1900。二代目三遊亭円朝に入門。
     三遊派の再興を期し噺の創作活動をし
     て新風を起こす。

出典・・村上護著「今朝の一句」。

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