名歌名句鑑賞

心に残る名言、名歌・名句鑑賞

タグ:俳句、川柳


*************** 名歌鑑賞 ****************


須磨寺や ふかぬ笛きく 木下やみ   
                      芭蕉

(すまでらや ふかぬふえきく こしたやみ)

意味・・この須磨寺の、青葉小暗い木立の中にただずむと、
    昔のことが偲(しの)ばれる。そしてあの平敦盛(
    あつもり)の吹く青葉の笛の音がどこからか聞こ
    えてくるように思われることだ。

    青葉の笛は明治の唱歌になっています。
    https://www.youtube.com/watch?v=q8zBc9cJOok

    一の谷の 戦敗れ
    討たれし平家の 公達(きんだち)あわれ
    暁寒き 須磨の嵐に
    聞こえしはこれか 青葉の笛

 注・・須磨寺=神戸市須磨寺町にある福祥寺の通称。
     寺には平敦盛が夜毎に吹いたという青葉の笛
     が保存されている。
    平敦盛=笛の名手として鳥羽院より青葉の笛を
     賜った。17才で平家の一門として一の谷の闘
     に加わった。源氏側の奇襲で劣勢になり船に
     逃れようとした時、熊谷直実に討たれた。

作者・・芭蕉=ばしょう。1644~1699。

出典・・笈の小文。


*************** 名歌鑑賞 ****************


どうしても なくて七癖 しうとの目 
                       
(どうしても なくてななくせ しゅうとのめ)

意味・・どうしても、姑の目から逃げることは出来ない。
    人それぞれに癖がある。悪い所、欠点を探す気に
    なれば、いくらでも出てくるはずだから、その意
    地悪い目を逃れることは出来ないのである。

 注・・しうとの目=「しゅうとめ(姑)」と「姑の目」を
     掛ける。

出典・・川柳「雪の笠」(小学館「日本古典文学・川柳」)
 


*************** 名歌鑑賞 ****************


奈良の春十二神将剥げ尽くせり                     
                   夏目漱石

(ならのはる じゅうにしんしょう はげつくせり)

意味・・「あおによし奈良の都は咲く花の匂うがごとく
    いま盛りなり」と詠まれた奈良時代の春。
    その時代に造られた新薬師寺の十二神将像、そ、
    の像の鮮やかな色は剥げ落ちてしまっている。
    色は剥げ尽くしているが、生き生きとした像を
    見ると感嘆させられる。

    この句は明治29年の作です。
    明治時代は、日本の文化がどんどん塗り替えら
    れていった時代。西洋化を急ぐ事が至上命題と
    されていた。
    十二神将の像、造られた当時は群青や緑、朱や
    金の色が施され、華麗なものだったとされてい
    る。色は剥げ尽くしても、命を失わないこの像。
    古びいて行く毎に魅力を増す十二神将。
    西洋化に色が塗られている時代。どんな色に塗
    り替えるか。外側だけを塗りたくる西洋の模倣
    だけで終わらせたくない・・・。

 注・・十二神将=奈良・新薬師寺にある十二神将が有
     名であり、奈良時代(八世紀)に造られた最古
     のもの。官毘羅(くびら)大将、代折羅(ばさら
     )大将、迷企羅(めくら)大将など12神将が薬師
     如来に従っている。薬師如来を信仰する者は
     守護されるとされ、各神将はそれぞれ七千、
     総計八万四千の煩悩(人の悩み)に対応すると
     されている。

作者・・夏目漱石=なつめそうせき。1867~1916。東大
    英文科卒。小説家。

出典・・大高翔著「漱石さんの句」。


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雪しろの かかる芝生の つくづくし  
                    良寛

(ゆきしろの かかるしばうの つくづくし)

意味・・雪どけの水があふれて、荒地の草の間から
    生えたつくしまで覆っているが、つくしは
    水に負けず、力強く頭を持ち上げているこ
    とだ。

    良寛の住んでいた当時の越後は、水害の連
    続であった。雪融け、梅雨末期、秋の長雨
    に農民は苦労していた。
    小川や田からあふれた水は、道を覆い草を
    覆ってしまう。しかし、春の大地は力強い。
    水の中からつくしが伸び蕗(ふき)のとうが
    頭を持ち上げる。そうした生命力に良寛は
    感嘆して詠んでいます。そして、農民の努
    力にも。

 注・・雪しろ=雪どけの水。
    芝生(しばう)=荒地や道の端に生えた雑草。
    つくづくし=つくし。

作者・・良寛=りょうかん。1758~1831。

出典・・谷川敏郎著「良寛句全集」。


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一えだの梅はそへずや柊うり
                    横井也有

(ひとえだの うめはそえずや ひいらぎうり)

意味・・節分の頃となると、柊売りが来るが、柊売りよ、
    そのとげとげしい葉のほかに、梅の一枝でも添
    えたらどうかね。

    今夜は鬼が集まる夜だからといって、どこの家
    でも、鰯の頭を柊に刺し戸口に立てて身を慎ん
    だものだ。そして、声をふるわせて「福は内鬼
    は外」と鬼を追い出していたことが懐かしい。
    今ではただ形ばかりの豆まきをするようになっ
    た。過ぎ行く年がますます積み重なって、姿は
    老け込み心は頑固になり、今では世の嫌われ者
    の老人が鬼と一緒に放り出されないのがせめて
    もの幸せだ。

 注・・柊(ひいらぎ)うり=節分の時、焼いた鰯の頭を
     柊に刺して厄除けのまじないとして戸口に刺
     す風習があった、この柊を売る人。

作者・・横井也有=よこいやゆう。1702~1783。尾張
    藩御用人。

出典・・俳文集「鶉(うずら)衣」(河出書房新社「日本の
    古典・22」)

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